【医師に聞く】更年期の不眠は女性ホルモンが原因!? 後編

前編では、女性ホルモンが急激に変化する更年期に不眠の悩みをもつ女性が増える原因について、産婦人科医の風本真希先生へお話を伺いました。後編ではその治療法や家庭でできる対策、さらには風本先生ご自身が実践している快眠法などについて、詳しく教えていただきました。
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更年期の不眠には、女性ホルモンの減少に身体を慣らすような治療を。
—不眠などの症状がある更年期の治療法とは?
前編でもお話ししましたが、女性ホルモンは一般的に40歳くらいから分泌量が減り始め、閉経によって卵巣機能がなくなるとガクンと減ってしまいます。その変化に身体が順応できず、心身の不調が出てきてしまうのが更年期障害の症状と言えます。
更年期障害の治療として有効なのは、不足している女性ホルモンを補う『ホルモン補充療法』です。時間をかけて少しずつ補充量を減らしながら、徐々に身体を慣らしていきます。急激な女性ホルモンの減少を抑えることで、更年期障害の症状を和らげるという考え方ですね。今の日本では、健康保険が適用される処方薬として、飲み薬のほか、貼り薬、ジェル状の塗り薬などもあります。
また、更年期の不眠で悩んでいる方への効果が期待できる治療法として、プラセンタの皮下注射もあります。プラセンタとは胎盤から抽出した成分を含む医薬品で、更年期障害を患っている方には健康保険が適用になります。注射して数日は、寝つきが良くなる効果が期待できます。
ひと昔前は「更年期は病気ではないのだから耐えろ」という風潮があったかもしれませんが、最近では理解も広がり治療の選択肢も用意できているので、受診して改善しようという方が増えているように感じますね。
平日は忙しくてリラックスする時間を持てないという方には、週末に7〜8時間眠れるような睡眠剤を飲んで、ゆっくりと眠ることをおすすめする場合もあります。
就寝前にワンクッション置くことで、休息モードへ。
—更年期の不眠対策として、生活習慣で気をつけておくとよいことは?
ありきたりですが、寝る前にお風呂にゆっくりと入ることをおすすめしますね。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、活動時には交感神経が、休息時には副交感神経が優位になります。日中、アクティブに活動して交感神経が優位になっている状態が続いていると、いざ、夜に眠ろうとしても副交感神経優位の休息モードにシフトチェンジしにくいですよね。就寝前に入浴してリラックスすることで、休息モードになり、眠りにつきやすくなりますね。
さらに、私たちの身体は夜に体温が下がり眠れるようできているのですが、入浴で体温を上げることで、この体温低下がしっかりとあらわれて眠りやすくなるんです。自分の好きなアロマオイルや入浴剤を入れると、リラックス効果も高まると思います。
また、アルコールの摂り方もポイントです。お酒を飲むと寝つきはよくなるかもしれませんが、飲みすぎると眠りが浅くなったり、早く目が覚めてしまったりと、眠りにとってはあまりよくありません。
私もお酒を飲むのが好きでよく飲みすぎてしまうのですが、アルコールを摂りすぎるとやはり眠りが浅くなり、早朝覚醒したり、夜中に喉が渇いて起きてしまったり。最近は、体力的なことも考えながら、お酒の量を減らす、飲まずにゆっくり眠る日を増やすなど、心がけています。
あとは、枕やマットレスなどの寝具にも配慮できるとよいですよね。私は、夫と同じベッドに寝ているので、寝返りなどの振動が伝わりにくいポケットコイルのマットレスを使っています。相手が動いた振動で起きてしまうのは、お互いにイヤですよね(笑)。眠るときは遮光カーテンで真っ暗にして、朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びて。それだけで気持ちがよいし、1日のスイッチが入りますね。
更年期は、自分の身体と向き合うチャンス。
—更年期と上手に付き合うための心構えは?
更年期と聞くと、ネガティブな印象があり構えてしまいますが、それは誰にでも訪れるものです。どんな症状があらわれるのか、自分の身体と向き合うチャンスだと思います。
そんなふうに前向きにとらえるためには、知識を持つことが大切です。「更年期は、自律神経が乱れるから、突然汗をかいたり、不眠になったりするもの」「更年期の年代には、社会的なイベントがたくさんあって、心が落ち込むもの」など、知っていれば安心できますし、解決策を考えたり、婦人科を受診したりといったことも可能です。
また、更年期で女性ホルモンが減少した後には、高脂血症や骨粗しょう症など、これまで女性ホルモンのおかげで抑えられていた疾患にもかかりやすくなります。でも、そういうリスクがあることを知っておけば、不安がるだけでなく、検査を受けてクリアできれば安心できますし、症状があれば治療や対策もできますよね。
あとは、食事の栄養バランスにも気をつけて。幸せホルモンといわれるセロトニンや睡眠ホルモンといわれるメラトニンがつくられる材料であるトリプトファンという必須アミノを摂るとよいと言われています。赤味の肉類や豆類に多く含まれているので、ぜひ意識してみてください。
体力は若いときと同じではないので、自分の限界を知ることも大事。例えば、仕事をこれまで10やっていたとしても、疲れているときは7〜8割に抑えるなど、コントロールできるとよいですね。
女性の一生は、女性ホルモンの変化に大きな影響を受けています。そのことを知っているだけでも、ちょっとした身体や心の変化にも落ち着いて向き合うことができるはず。どうぞ正しい知識とともに、これからの自分と上手に付き合っていってください。
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『まきレディスクリニック』 院長
風本真希(かぜもとまき)
産婦人科医。関西外国語大学米英語学科卒業後、米国マサチューセッツ州バブソンカレッジに留学。その後、近畿大学医学部卒業。大阪市立大学医学部附属病院、都立広尾病院、ロイヤルベルクリニック不妊センターに勤務。
パークサイド広尾レディスクリニック院長、四ツ谷レディスクリニック勤務などを経て、2018年6月、東京都の高田馬場に女性のためのクリニック『まきレディスクリニック』を開設。産婦人科医としての幅広い経験を重ねるなかで、特に女性の体調に変化を及ぼすホルモンに興味を持ち、研究に注力。
女性が一生涯女性特有の病気で悩まず、元気に、自分らしく輝けるようにという願いを胸に、日々患者さんと向き合っている。
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