新年度でストレスUP! 睡眠の悩みが増える春を乗り切れ

春は、引っ越し、入学、入社、人事異動など、環境が変わりやすい時期。そんな中、睡眠の悩みを抱える人が増えると言われています。その原因や対策について、ストレスの関係する睡眠障害に詳しい早稲田大学人間科学学術院 助教の岡島義(おかじま いさ)先生に話を聞きました。
寝不足になり、昼のパフォーマンスが下がり気味に
──春ならではの睡眠の特徴があれば教えてください。
睡眠不足のような睡眠の悩みが目立ち始めます。春は冬に比べて夜明けが早いもの。冬の朝だったらまだ暗くて眠っていた時間でも、春はすでに明るくなってきて、身体が早く目覚めてしまうのです。
──春は、環境が変わる人が多い季節です。そのことで起こりがちな睡眠の悩みはありますか?
誰もが新しい場所で「がんばろう」と張り切っている時期ですね。その分、「日中、きちんと仕事するために、しっかり寝なければ」「遅刻しないように早く寝ないと」などと、睡眠の焦りが出てくる人が多く見られます。
しかし、焦るほど脳は休むことができず、眠りの質が悪くなる傾向に。日中眠気が増してボーっとしてしまい、能率が上がらない、ミスするといったことも。夜になって「今日こそ寝なければ」と焦っても眠れない、という悪循環を繰り返し、睡眠の悩みを深くする人が少なくありません。
神経質なタイプの人は、「遅刻しないように」「早く起きなきゃ」と気にするあまり、何度も目が覚めたり、朝早くに目が覚めてしまい寝不足になることもあります。
──「寝なきゃ、起きなきゃ」と思うことは、逆効果になるのですね。
身体には、今までの環境に適応した睡眠リズムが出来上がっています。4月1日から環境が変わるからといって、3月31日に「早く寝る」ことは急にはできません。今まで深夜12時に寝ていた人が、10時に寝ようと布団に入ってもなかなか眠れず、結局眠りにつくのは12時なのです。
春から早起き必須の人が実践したい2大対策
──「春から環境が変わるから、今までより早起きしなければ」という人は、どのような対策をすればよいのですか?
睡眠リズムを前倒しにする必要があります。そのために、大事なのは次の2つです。
・起きる時間を一定にする
休日も含めて起きる時間を一定にすると、眠気を促すメラトニンというホルモンの分泌される時間が定着し、夜になると同じ時間帯に眠気がやってきます。やがて、新しい環境に合った睡眠リズムが出来上がってくるのです。
・起きたあとに、朝日を目から取り入れる
朝起きて、夜眠くなるのは体内時計が「起きる→眠る」という睡眠覚醒リズムを刻んでいるからです。体内時計は、朝日が目から入って脳に伝わることで毎日リセットされて動き始めます。そのリセットボタンを作動させるには、目覚めてから2時間以内に45分~1時間ほど朝日を浴びるとよいと言われています。
しかし朝は忙しいので、最低でも30分程度を目安にするとよいでしょう。朝に散歩する、窓際で朝食を食べる、自転車を使わず歩いて通勤する、といった工夫をしてみてください。目から光が入ることが重要なので、サングラスやPC対応メガネをかけると効果が半減するため気をつけて。反対に、夜の光は眠気を飛ばしてしまうので、夕食後は間接照明などの暖色系の明かりで過ごしたり、PC対応メガネをかけることをお勧めします。
──30分間、“何かをしながら”光を取り入れるなら、簡単にできそうです。
新しい環境に合わせて早起きすると、最初は睡眠不足のような状態になります。しかし、上に紹介した2つのことを守っていれば、1~2週間で睡眠リズムが身体になじんでくるでしょう。
ストレスで睡眠の悩みがあるときは、紙に書く
──環境変化によるストレスが、睡眠の妨げになることも多いと思います。そのようなときの対策は?
生活にメリハリをつけることが大切です。家に帰ったら、仕事は持ち込まないこと。日中にあったことを寝る前にゴチャゴチャ考えがちですが、なるべく頭と身体を休ませることを意識してください。
──布団に入ると、今日一日の反省や悩みなどをゴチャゴチャ考えることがよくあるのですが……。
考え事をするほど頭がさえて眠れなくなるんです。頭の中を整理するために、考えを紙に書くといいですよ。たとえば、「上司に心ないことを言われたけれど、どうすればいい?」なんて人間関係に悩んだら、「とりあえず、明日になったら考えよう」と紙に書くんです。
布団の中でその悩みが浮かんできても、「今はよい考えが浮かばないから、とりあえずやめよう。明日になったら考えよう」といいうクセをつけることができます。
──悩むことを先延ばしにしただけで、睡眠の解決にならないのでは?
先延ばしも解決策のひとつなんです。人間関係はもちろん、悩みというのはひと晩で解決できることは少ないでしょう? そんなときは布団の中で何も考えず、さっさと寝てしまうのが得策なんです。
睡眠を生活の中心に考えると、一日のパフォーマンスが向上する
──最後に、新年度に向けて気持ちよいスタートを切るために、メッセージをお願いします。
「人の衝動性」「気分の落ち込み」「作業効率の低下」はすべて、睡眠不足が拍車をかけることがわかっています。
「仕事が忙しい」「対人関係がうまくいかない」などと言って、睡眠を削って、作業したり考えたりすることは逆効果。十分な睡眠をとることを意識した生活習慣を実践すると、一日のパフォーマンスが向上します。
もし、春に睡眠の悩みを抱えたら、睡眠リズムを見直し、整えるきっかけにしてください。それがうまくいくと、新生活を好調な滑り出しで迎えることができるでしょう。
文/内藤綾子
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早稲田大学 人間科学学術院 助教
岡島義(おかじまいさ)
博士(臨床心理学)、臨床心理士、専門行動療法士、産業カウンセラー。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、東京医科大学睡眠学講座客員講師、医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリニック代々木主任心理士を経て、2015年 現職。臨床心理士、専門行動療法士として睡眠障害や気分障害、不安症に苦しむ人々への支援を行いながら、認知行動療法の効果を高める研究を行う。
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