【専門家に聞く!】睡眠不足が原因で便秘になるってホントですか?(第1回) 「実は深かった! 睡眠と腸の関係」
INTERVIEW

睡眠が不足すると、心や身体の調子が悪くなる人が少なくありません。そんな中、「便秘が気になる」という人もいるようです。睡眠不足と便秘は関係があるのでしょうか。日本橋レディースクリニック院長の野澤真木子先生に話を聞きました。2回連載でお届けする第1回は、睡眠と腸の関係をひも解きます。
第2回の記事「【専門家に聞く!】睡眠不足が原因で便秘になるってホントですか?(第2回) 「快眠を目指し、便秘解消に向けて前進!」」はこちら
毎日出ていても便秘なの!?
──先生のクリニックは「肛門外科・胃腸内科」を標榜していますが、便秘で悩む人は多いですか?
若い女性が多いです。実は、便秘には、「○日で○回出なかったら便秘」という定義はありません。排便習慣には個人差があるため各々が便秘と言う状態は様々です。
医学的には「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
・排便回数が減少しておなかが張ってつらいとか腹痛がある
・いきんでもなかなか排便できない
・毎日出ているが、便が硬くてコロコロの形状をしているため排便することが困難である
などといった症状があるなら便秘症です。
──毎日出ていても便秘の場合があるんですね。逆に健康な排便を教えてください。
・腹痛を伴わず、また強くいきまずに、スルッと出る
・便は歯磨き粉くらいの硬さ
が理想です
頻度や回数で便秘を判断しがちですが、排便するときの身体の状態や便の形状などもよく観察して判断することが必要です。
便意をがまんしてはいけない
──便秘の主な原因はどのようなことでしょうか?
便秘の原因は様々です。女性は月経や妊娠が関与して便秘になることも多いのですが、内服中の薬の影響や、他の疾患に伴う便秘、また大腸に重大な病気が潜んでいるための便秘のこともあります。
しかし、他の疾患によるものでない方の場合は、次の3つが考えられます
・食事の栄養バランスが悪い
ファーストフードやダイエットなどで食生活に偏りがあり、栄養バランスを考えた食事をとっていません。ときどき「ヨーグルトは食べているのに便秘が治らない」という人がいますが、食事はコンビニ弁当やインスタント食品などで簡単にすませていることも。ヨーグルトなどは補食としてとり入れ、まずは主となる食事を見直すことが前提です。
・運動不足
運動することで腸の動きも活発になります。また腹筋が弱いと、便を十分に外へ押し出す力が不足してしまうために便秘を引き起こしやすくなります。忙しい毎日の中で、運動する時間をとることが難しいのかもしれませんが、なるべく日常生活の中でもエレベーターを使わずに階段を利用するなど心がけ歩いたりしましょう。
・便意をがまんする
「排便したい」というときにがまんすることが頻繁になると、便意を感じにくくなる傾向があります。「朝はバタバタしてトイレに行く時間がない」「会社ではしたくない」といった人は多いですが、排便のタイミングを逃さないでください。
睡眠が不足すると便秘になるというデータはないけれど……
──睡眠不足と便秘は、関係があるのでしょうか?
「睡眠不足によって便秘になる」という確実なデータはありません。とはいえ、まったく関係がないとは言い切れないと思います。
──というと?
腸をはじめとする消化器、呼吸器、循環器といった体内の器官の活動は、自律神経が24時間絶えず調整しています。自律神経には活動時や昼間に活発になる交感神経と、休息時や夜に活発になる副交感神経の2種類があります。
多くの器官は、交感神経が優位になっているとき活動モードに。それに対し、腸をはじめとする消化器官は、副交感神経が優位になっているとき活動する仕組みになっています。腸は、身体がリラックスしているときに働いているのです。
睡眠不足になると、交感神経が優位になり活動モードの時間が長くなるため、自律神経のバランスが悪くなります。うまく副交感神経に切り替えができなければ、腸がうまく機能せず便秘になる可能性があります。
腸内細菌の日内変動にも影響が出て便秘を引き起こす可能性も
──自律神経が大きく関係しているのですね。
それだけではありません。腸の中には1000種類以上、約100兆個の腸内細菌が存在しますが腸内細菌にも日内変動があるのではないかと考えられています。そのため睡眠の変化が腸内細菌の組成や機能にも影響を与え便秘を誘発する可能性も考えられます。
日本レディースクリニックの待合室
──そのほかに、睡眠不足による影響はありますか?
・食欲が低下して食べ物の量が不足し、うまく便が作れない
寝不足だと頭がボーッとしたり疲れがたまったりして、「食べたい」という欲求も起こりにくくなります。食べる量が少ないと便の材料が不足し、十分な量の便が作られません。
・夜中に便を作る時間が短くなる
便は寝ている間に作られて、朝起きたときに排便するスタンバイをしています。寝ている時間が短いと、その分便を作る時間が減ることに。
・朝に時間がなくなり便意を逃す
早起きができず、朝はバタバタになりがち。排便する時間の余裕がないと、便意を逃してしまいます。
・腸から肛門へ押し出す活動が鈍くなる
人は、睡眠中に消化管の蠕動運動が活発となり、さらに腸内の内容物を肛門へと押し出して排便につなげます。睡眠不足で、便を押し出す一連の活動が鈍くなると便秘の原因に。
このように、睡眠は腸の活動にとても影響を与えます。「睡眠が不足しているから便秘になる」という自覚は乏しいかもしれませんが、便秘のひとつの原因になっている可能性もあります。
第2回では、睡眠不足を見直す生活習慣と、便秘解消につなげる方法を探ります。
文/内藤綾子
監修:医療法人 社団桃仁 日本橋レディースクリニック院長 野澤真木子先生
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日本橋レディースクリニック院長
野澤真木子(のざわまきこ)
杏林大学医学部卒業。同大学医学部付属病院第一外科入局。消化器外科を専門として勤務。大腸肛門病センター松島病院、松島ランドマーククリニック院長を経て、現職に。
http://nl-clinic.jp/
資格:日本大腸肛門病学会専門医、指導医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本外科学会専門医
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