【教えて!Dr.】 睡眠の悩みが深くなる更年期を、こう乗り切る 第1回

更年期になるとさまざまな体調不良が現れますが、不眠もそのひとつ。2回連載でお届けする第1回は、更年期障害による睡眠の悩みや治療法について解説します。更年期治療に詳しいポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~清水なほみ院長に話を聞きました。
第2回の記事「【教えて!Dr.】 睡眠の悩みが深くなる更年期を、こう乗り切る 第2回「更年期障害による不眠、日常生活を見直してみよう」はこちら
だいたい45~55歳が更年期。症状には個人差が
──更年期とは、具体的にいつ頃のことを指しますか?
閉経をはさんで前後10年です。閉経の平均年齢は約50歳なので、だいたい45~55歳が「更年期」ということになりますが、閉経年齢には個人差があるので、早い人は40代前半でも更年期に差しかかることがあります。
──その頃に、さまざまな症状が出始めるのですね。
閉経にともない卵巣の働きが衰え、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少することで症状が出ます。
更年期に出現する心身の不調が「更年期症状」、更年期症状が極端にひどくなり、日常生活にまで支障をきたしてしまう場合を「更年期障害」といいます。症状や現れ方は人それぞれ違います。
熟睡感がない、寝つきが悪い。睡眠の悩みはさまざま
──更年期障害の具体的な症状を教えてください。
身体……のぼせ、ほてり、発汗、めまい、頭痛、息苦しさ、胸の痛み、ひざやかかとの痛み、のどのつかえ感、疲れやすさ、皮膚の乾燥感など
心……イライラ、不眠、気分の落ち込み、やる気が出ない、集中力の低下、性欲の低下など
睡眠の悩みに関して言えば、
・寝つきが悪い
・途中で目が覚める
・朝起きたときに「寝た感じがしない」
・寝ているのに疲れが取れない
・ほてりや発汗のせいで早朝に覚醒する
といった症状が代表的です。
──更年期障害と思ったら、市販の薬で対応する人もいると思うのですが。
ドラッグストアなどでは、更年期に出やすい症状をケアする市販薬がたくさん出回っています。試しながら、自分に合ったセルフケアを見つけることはとても大切です。ただし、1~2ヶ月試して、効果が感じられなかったら受診しましょう。
市販薬で効果がないのに何ヶ月も続けて悪化してから受診し、「もっと早く来れば良かった」という人は珍しくありません。
つらい症状になる前に受診して、予防的に薬を使うのが理想
──受診のタイミングを教えてください。
本人にとって「不快だ」「つらい」「日常生活に支障がある」という症状が出たら受診をおすすめします。ただし、つらい症状になる前に予防的な薬の投与が一番よいので、本当は少しでも気になったら受診するのが理想です。
病院は、婦人科や、更年期に詳しい内科が適しています。実際にホルモンバランスが更年期のパターンになっているかどうかは、血液検査をすればすぐに分かります。
──更年期障害による睡眠の悩みに対して、治療法はありますか?
次の4つのいずれかを投与し、併用することもあります。
・ホルモン剤……更年期障害の中心的な治療薬で、効果が高く、すみやかに効きます。のぼせやホットフラッシュの症状によく用いられ、ほてりがひどくて、夜中に汗をかいて目を覚ましてしまうといった睡眠の悩みに有効です。
服用し始めたら「一生飲み続けるの?」と心配する人がいますが、そんなことはありません。急激なホルモンの低下をちょっとなだらかにして、身体がその変化に振り回されないようにするための治療です。
症状がひどい間はしっかりホルモン剤で補い、徐々に減らし、最小量にしても調子が悪くならなければ、しばらく飲むのを中断。「ちょっと体調が悪くなってきた」と思ったら時々薬を使うという使い方もあります。
・睡眠導入剤……「眠れない」「眠りに入るまで1時間以上かかる」「夜中に2~3回目覚めてしまう」といった症状があり、“とにかく眠りたい”という人向きです。
服用すれば眠れますが、安易に使い続けていると依存性が出て「ないと眠れない」という人がときどきいます。使うときは、「あくまで対症療法なので、1ヶ月以内にやめていけるようにしましょう」と必ずお話しています。日常生活を見直したり、眠れない原因を探って取り除いたりする作業をしながら、服用することが大事です。医師もカウンセリングしながらサポートします。
・漢方薬……「なんとなく不定愁訴があるけれど、それほど強くない」「ゆるやかに治療したい」「イライラして落ち着かない」といった人にすすめられます。漢方薬で「眠れるようにする」というより、「気を鎮める」といった治療です。症状と体質に応じた漢方薬だけで、かなり楽になる人もいます。
・プラセンタ……肝炎や更年期障害の治療薬として厚生労働省から認可されている薬。細胞の活性化に役立つ、胎盤エキスです。「なんとなく眠れていない気がする」「寝てはいるけれど疲れが取れない」という睡眠の悩みに対し、熟睡感を得られる人が多く見られます。
「更年期だから仕方ない」という自己判断は禁物
──更年期に差し掛かると、「更年期だから仕方ない」と放置する人も多いのではないでしょうか。
月経がきちんと来ていても、更年期症状が出る人はいます。40歳を過ぎて「原因のよくわからない体調不良」が続いたときは要注意。
更年期障害と同じ症状で、胸の痛みが心臓の病気のせいだったり、めまいや耳鳴りが脳腫瘍のせいだったりすることもあります。「更年期だから」と自己判断せず、大きな病気が隠れている可能性を見逃さないためにも、受診すると安心です。
第2回は、更年期障害による不眠に悩む人に向けた、日常生活の注意点などについて解説します。
文/内藤綾子
監修:ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~清水なほみ院長
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ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~
清水なほみ(しみずなほみ)
2001年広島大学医学部医学科卒業。広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て、2010年9月「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業。日本産科婦人科学会専門医。日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
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