【教えて!Dr.】「よく眠れない」は漢方でやさしく治す 第2回「不眠症状に効く漢方薬とは?」

「よく眠れない」「目覚めが悪い」といった不眠症状は、身体にやさしい漢方で改善を目指すことができます。漢方外来で多くの不眠患者に治療を施す代官山パークサイドクリニックの岡宮裕先生に、漢方と睡眠の関係について聞きました。2回連載でお届けする第2回は、不眠症状に効く漢方薬や日常生活の注意点などについて解説します。
第1回の記事「【教えて!Dr.】「よく眠れない」は漢方でやさしく治す 第1回「具体的な漢方治療の進め方と漢方薬について」」はこちら
「よく眠れない」といった不眠症状に効く漢方薬は?
──不眠の症状に効く、具体的な漢方薬を教えてください。
代表的な漢方薬は、次の通りです。
抑肝散(よくかんさん)
肝の高ぶり抑え、高ぶった神経を鎮める。イライラや怒りやすい衝動性を改善するので、興奮して眠れないときに効果的。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
神経の高ぶりを抑え、筋肉のこわばりやつっぱりを緩めて、心と身体の状態を良好にする。イライラや不眠があり、虚弱体質な人向き。抑肝散に比べ、より体力が低下して症状が慢性化している人に。
加味帰脾湯(かみきひとう)
精神的ストレスによる憂うつ症状や不安感を抑える。クヨクヨして不安で眠れない人にピッタリ。また、体が細くて血の巡りが悪い人にも。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
ホルモンバランスを整える効果が期待できるので、女性の更年期障害に伴う不眠・冷え・イライラなどに。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安症状の改善に強い。寝つくとき、のどや胸につっかえるような違和感がある、胸の苦しさや動悸などで眠れないといった人に効果的。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
精神不安や神経過敏などの精神疾患を改善させ、夜に高ぶった神経を抑える。生活リズムが崩れたことで体力が衰え、心身が疲労して眠れない人に。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
ストレスが主な原因の神経症、不眠症、うつ病などの症状を軽減。精神的なバランスが崩れてしまった人に処方される。
「よく眠れない」とひと言で言っても、不眠症状に対してこれだけの漢方薬があります。その人の証(体質)にあった漢方薬を処方するためには、専門医に相談することが重要です。
空腹時に白湯で飲むと、吸収がよくなる
──副作用はありますか?
漢方薬は複数の生薬を組み合わせることで、効果を最大限に高め、毒性や不都合な作用は最小限に抑える工夫がされています。それでも苦みはあります。
また、含まれる生薬によって、のぼせ、食欲不振、吐き気などが出ることも。そんなときはすぐに服用をやめ、主治医に相談するとよいでしょう。
──服用するときの注意点は?
吸収されやすいように、空腹時になるべく白湯で飲んでください。
漢方薬の効果を最大に引き出すには、生活リズムを整えることが前提
──漢方薬の効果を最大に引き出すポイントはありますか?
漢方薬だけに頼らないこと。漢方薬を服用するときは、まず日常生活のリズムを整えることが大前提です。
たとえば、「よく眠れない」といった不眠症状で悩む人の多くが、休日に寝だめをしています。できれば、休日も生活時間を一定にできると睡眠リズムを崩さずにすみます。
金曜日は夜更かししても、土曜日の朝はできるだけいつもと同じ時間に起き、昼寝をしないで過ごすと夜は早い時間からぐっすり眠ることができるでしょう。
──そのほかに、日常生活のアドバイスはありますか?
夏は冷たいものを食べたり飲んだりしすぎですが、身体を冷やさないようにしてください。
トマト、レタスなど、夏に収穫される野菜は身体を冷やします。生で食べるのを避けて、スープなどでなるべく火を通すようにして。
マンゴー、バナナ、パイナップルなど、南の国や夏に収穫される果物も身体を冷やす傾向があるため、大量に食べないこと。小麦も同様なので、連日麺類にするより、ごはんを主食にしてしっかり食べましょう。
また、適度な運動も重要です。ウォーキングなどの軽い有酸素運動がおすすめ。最近は、会社帰りにジム通いをしている人は珍しくありませんが、身体が興奮して睡眠モードに入りにくくなります。激しい運動をするのであれば、早起きして朝から行ってください。
女性に多い「瘀血(おけつ)」が、不眠を悪化させる
──会社帰りに「ひと運動」という男性は多いかもしれません。女性に対するアドバイスはありますか?
東洋医学で血の巡りが悪い状態のことを「瘀血」と言います。瘀血は、女性に多く見られ、虚証+瘀血の人は、不眠症状が悪くなりやすい傾向があります。
・身体を温めるために、ゆっくり入浴する
・アロマを炊くなどしてリラックスする
・寝るときは身体を締めつける下着や服装などは避け、パジャマなど睡眠に適した服装にする
といったことを心がけるとよいでしょう。
──最後に、読者へメッセージをお願いします。
睡眠は生活習慣が関係しています。「よく眠れない」などと思ったら、生活リズムを見直し、睡眠リズムを整えることから始めてください。そのうえで漢方薬を活用することが、不眠症状を改善する大きな手助けとなるでしょう。
漢方医学は特別ではありません。風邪をひいたら内科にかかるときのような気軽さで、「よく眠れない」と不眠に悩んだら、いつでも相談に来てください。
文/内藤綾子
監修:代官山パークサイドクリニック 岡宮 裕(おかみやゆたか)先生
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代官山パークサイドクリニック
岡宮裕(おかみやゆたか)
1990年、杏林大学医学部 卒業。慶応義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局。腎臓病・高血圧・糖尿病などの診療に従事した後、横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院などに勤務。2009年、代官山パークサイドクリニック開業。「身体に負担の少ない、一人一人に最適な治療」を心がける。2011年、海外渡航前医療センター開設。スポーツドクターとしても活動。
https://www.parksideclinic.jp/
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