人の睡眠 緻密に働く女性の睡眠システムとは?
COLUMN

人の睡眠…特に女性の場合、男性以上に月経、妊娠・出産などにより身体は目まぐるしく変化していきます。この女性特有の変化は、大きく睡眠に影響を及ぼすことになると言われています。さて、それはどういうことなのでしょうか?
女性の身体は女性ホルモンの分泌量の変動が激しい
人の睡眠をコントロールするのは脳幹の中の視床下部。そこには、自律神経や食欲、性ホルモンなどを調整する指令センターがあり、それぞれが互いに影響しあい、毎日の睡眠の質や時間などを変えています。
例えば、強いストレスで交感神経が優位な状態が続くと眠れなくなったり、食欲が満たされれば副交感神経が優位に働いて眠くなります。このような経験は、男女問わず誰にでもあるのではなでしょうか? こうしたメカニズムは男女ともにほぼ共通と考えられています。しかし、ひとつだけ大きく異なるものがあります。それが性ホルモンです。
男性ホルモン
男性ホルモンは男性を男性特有の体つきや思考回路に発育させるホルモンで、総称として“アンドロゲン”と呼ばれています。男性は生涯を通して男性ホルモンが分泌されます。男性の場合、分泌される量はあまり変動がないので、睡眠の指令センターが性ホルモンの影響を受けることは、ほとんどないと言われています。
女性ホルモン
一方、子どもを産む性である女性は、“卵胞ホルモン(エストロゲン)”と、“黄体ホルモン(プロゲステロン)”という2つの女性ホルモンが周期的に分泌されています。これにより、月経周期が繰り返えされています。さらに、妊娠した場合も、身体の状態にともない女性ホルモンの分泌は大きく変化していきます。このとき、睡眠の指令センターとも活発に情報交換をし合い、睡眠を変えていると考えられています。
月経前や妊娠中は眠気が強くなる傾向がある
女性ホルモンである卵胞ホルモンと黄体ホルモン。これが眠りに関しては、それぞれ逆の方向に働きます。
卵胞ホルモンは覚醒を促し、黄体ホルモンは睡眠を促します。月経から排卵までの間、さかんに分泌される卵胞ホルモンの影響で睡眠が抑制され、この時期の女性は活動的になります。ところが、排卵後から月経前になると今度は多量に分泌される黄体ホルモンの影響で、睡眠時間が長くなります。実際、「生理の前になるとすごく眠くなる」という女性は多いのではないでしょうか。
そして、妊娠すると黄体ホルモンは、さらに活発に分泌され、眠気が一層強くなると言われています。これは、眠ることで身体がリラックスして、胎児がうまく育つようにするために備わった生物学的に非常に優れたシステムといえるでしょう。
ただし、月経前などにあまりにも日中の眠気が緩和されないときは、ホルモンのバランスが整っていないという可能性もあるので、そのような状況が続く場合は、婦人科に相談するとよいでしょう。
人の睡眠のタイプは常に変わるもの
たとえ、昨夜の睡眠時間が普段と比べて短かったとしても、深い眠りで脳と身体が満足している場合もあります。また、平均的な睡眠時間や身体によいと言われる睡眠時間を意識するがあまり、それがかえってストレスになることもあります。同じ1人の人でも生涯を通して睡眠のタイプがずっと同じということはないでしょう。
起きるタイミングやそのときの気分で、全体の眠りの印象も変わるものです。また、その人によって、“いい睡眠”の捉え方も異なるでしょう。人の睡眠は多様性に富んでいます。特に女性の睡眠は身体の変化に影響されることが多く、緻密な睡眠システムが働いています。女性はもともと、毎日同じペースで寝起きすることが、男性よりも難しくできているのです。1~2日の短い単位で睡眠を捉えて思い悩むよりも、ある程度、気楽に考えて大らかな気持ちでいた方が、かえってよい睡眠を得られるのではないでしょうか。
【参考文献】
・プレママタウン Drからの守れ安産!メッセージシリーズ第8回 「眠りが胎児を育てる。女性の睡眠システムは偉大!」の巻
https://www.premama.jp/tokushu/life_style/008/#midashi07
・カラダにe.サイト healthクリック「男性ホルモン&女性ホルモン 素朴な疑問」
http://www.health.ne.jp/library/3000/w3000653.html
『夢がかなう! 魔法の眠り』(東洋経済新報社)
文/高橋晴美

高橋晴美(たかはしはるみ)
フリーランス編集ライター。食と健康・旅をテーマに執筆。
主に、旭屋出版 日経BP社 夕刊フジ JTBパブリッシングの月刊誌およびMOOKSなどの編集記事・広告を担当。(株)スミフルジャパンのバナナソムリエ。ベジフルティーチャー。
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