【医師に聞く】寝るだけでダイエットできる!? 睡眠で痩せるコツ

夏が近づいて薄着になると、気になるのがダイエット。実は、睡眠不足はダイエットの敵だと言われています。その理由とは? 今回は、医学的根拠に基づいたダイエット法をアドバイスするダイエット外来、渋谷DSクリニックの林博之(はやしひろゆき)院長に話を伺いました。
しっかり寝ることは、ダイエットの最低条件!
—睡眠不足はダイエットにどんな影響をおよぼす?
私たちはいつも、ダイエット外来に来られる患者さんには6〜7時間くらいを目安に寝るようにおすすめしています。なかには、睡眠時間が平均3〜4時間という方もいらっしゃるのですが、睡眠不足で生活のリズムが整っていない方は、ダイエットに成功しづらい傾向があるんです。それは、睡眠の影響を受けるいくつかのホルモンが原因だとされています。
まずは、「成長ホルモン」。これは睡眠中、特に入眠後2〜3時間に訪れる深い睡眠時に分泌されると言われています。「成長ホルモン」は、年齢に関わらず、脂肪を分解したり、細胞を修復したりといった重要な役割を担っているんです。
ダイエットだけでなく、美肌や美髪をケアするカギも握っています。よく「美容のゴールデンタイム」といった言葉を耳にしますが、それは入眠後2〜3時間の「成長ホルモン」が多く分泌される時間帯を指しているんです。
そして、「レプチン」と「グレリン」という食欲に関わるホルモン。睡眠時間が短いと食欲を増進する「グレリン」というホルモンが増え、逆に食欲を抑制する「レプチン」が減ると言われています。つまり、睡眠不足だと、翌日につい食べすぎてしまうんです。
最後に、「コルチゾール」というホルモン。抗ストレスホルモンと呼ばれ、睡眠中の明け方に分泌が高まって目覚めの準備をします。「コルチゾール」の働きの1つには、脂肪の分解などを行って代謝を促進する作用も。睡眠不足になって十分に分泌されないと、その効果が期待できなくなります。
つまり、睡眠不足はダイエットの敵。逆に、しっかりと寝ることはダイエットをする最低限の条件とも言えます。
ダイエット中は、睡眠の質にも気を配って。
—ダイエット中の睡眠で気をつけることは?
ダイエットの味方になるホルモンをしっかりと分泌させるためには、睡眠の時間はもちろん、質も高めるように意識することがポイントです。では、良質な睡眠をとるために、どうすればよいのでしょう?
まず、意識したいのが、体内時計を整えて、理想的な眠りのリズムをつくること。私たちには太陽の光が当たれば目が覚めて、暗くなったら眠るというリズムが備わっています。その調整を担っている1つが「メラトニン」というホルモン。眠りを促す睡眠ホルモンとも呼ばれ、朝、太陽の光を浴びると分泌が減って1日の体内時計がセットされます。そして、暗くなる頃に分泌が増えていき、夜になれば自然に眠くなるというわけです。
ただ、最近は、眠る前にスマホやパソコンを見ている人が多いですよね。夜に明るい光を浴びると「メラトニン」の分泌が妨げられ、体内時計や眠りのリズムに影響をおよぼすと言われているので注意が必要です。「夜にスマホを見ても、睡眠時間は確保できているから大丈夫」という方でも、睡眠の質の変化に気づいていないこともあります。
また、ダイエット中の方は多少なりとも運動をするように心がけることも大切です。日中に運動をすれば、疲れて夜は自然と眠くなります。ただし、寝る前の運動は、交感神経が高ぶって眠れなくなるので避けましょう。勤務時間などによっては「どうしても夜しか運動できない」という方もいらっしゃるでしょうが、可能であれば運動は昼間に取り入れるのがベストです。
あとは、寝酒との付き合い方にも注意が必要です。寝酒はぐっすり眠れるというイメージがあるかもしれませんが、実はレム睡眠(身体を休息させる睡眠)を遮断してしまうので、睡眠にとってはよくありません。
また、寝酒には、寝つきがよくなったり、リラクゼーション効果があるというメリットもありますが、トイレが近くなったり、生活習慣病のリスクが上がったり、睡眠時無呼吸症候群が悪化したりといったデメリットもあります。睡眠の質にとっても、ダイエットにとってもよくはないので、習慣化している方はよく考えてくださいね。
朝は「王様の食事」、夜は「貧民の食事」
—ダイエット中の人に、1つアドバイスをするなら?
もちろん、食事のカロリー管理や日中に運動を取り入れることも大事なのですが、私たちがよく患者さんにアドバイスするのは「朝食を食べること」。
1日の食事の中では、どうしてもメインが夜ご飯になりがちですが、それを朝にチェンジする。朝食をしっかり食べることで、自律神経が副交感神経優位から交感神経優位へ切り替わり、1日のスイッチが入ります。そして日中アクティブに動いて、食べた分はしっかりと消費する。夜ご飯はできるだけ軽めにして、睡眠時間もしっかりと確保する。
患者さんに伝えるときには、朝は「王様の食事」、昼は「宮廷の食事」、夜は「貧民の食事」をとりましょう、と言ったりします(笑)。夜ご飯を軽めにして、夜は早めに寝る。そして朝は早起きして、しっかり食べようという気持ちに切り替えることがポイントです。体内時計や腹時計を、朝型にシフトするイメージですね。
私は今まで数千人の患者さんを診てきましたが、生活習慣が整わず、睡眠時間が3〜4時間の方は、どんなに運動しても、どれだけ食事に気を配っても、痩せないと実感しています。それほど、寝ることはダイエットにとって大切なんです。
朝ご飯をしっかりと食べて、日中に活動してそれを消費する。そうすると疲れて夜にぐっすりと眠れる。結果として、ダイエットの味方になるホルモンもしっかりと出る。まずは、この好循環をつくることが大切です。体内時計のリズムが整って睡眠の質を高められれば、よりダイエットの効果も期待できるはず。
私たちは、人生の1/4は寝ているわけです。ぜひ、ダイエットの味方になるような良質な睡眠をとれるよう、少しずつ生活習慣を整えるように心がけてみてください。
取材・文/武田明子
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渋谷DSクリニック院長
林博之(はやしひろゆき)
1987年東京慈恵会医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学形成外科助手へ。1993年The University of Texas Health Science Center at San Antonio(U.S.A)に留学。1994年医学博士の学位受領。1997年から東京慈恵会医科大学形成外科講師を勤めた後、2005年に医療痩身専門院「渋谷DSクリニック」開設・院長就任。医学的根拠のないダイエットに危機感を感じ、健康を損なわないダイエットを提唱。管理栄養士・漢方薬剤師などの各分野の専門家たちとともに、多角的な視点でダイエットをサポートしている。著書に『ダイエットの神髄〜医師が教えるリバウンド知らずのダイエット術〜(日本工業新聞社)』。
渋谷DSクリニック:http://dsclinic.jp
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