【医師に聞く】子どものいびきや睡眠障害の対策は? 後編
INTERVIEW

子どもの慢性的ないびきがある場合は、鼻づまりや睡眠時無呼吸症候群の可能性があるということを伺った前編 。では、子どものいびきがある場合の、受診の目安とは? 柏の葉耳鼻咽喉科クリニックの永藤裕(ながふじひろし)先生に、受診する際のポイントや治療法、対策などを教えていただきました。
前編の記事「【医師に聞く】子どものいびきや睡眠障害の対策は? 前編」はこちら
常にかいている子どものいびきは、受診して対策を。
—子どものいびきが心配なときの受診の目安は?
軽いいびきであれば、問題のない場合がほとんどです。例えば、風邪をひいたときだけいびきをかくというのであれば、家庭で様子を見ていただいて大丈夫だと思いますね。ただ、慢性的に、常にいびきをかいているようであれば、受診をおすすめします。
寝ているときにいつも口をパカッと開けている場合も要注意です。呼吸が止まっているような時があるなら、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるので受診をおすすめします。
また、寝ているときの子どものみぞおちの動きも、ご家庭での観察ポイント。子どもの場合は、鼻や喉の通り道が狭くなって呼吸の抵抗が大きくなると、みぞおちの辺りがペコペコとへこみます。患者さんには、寝ているときのいびきの状態とみぞおちの動きを親御さんにビデオで撮影してきてもらうことが多いですね。
スマホで20〜30秒程度でいいので。あらかじめビデオを撮っておけば判断材料になるので、診察もスムーズだと思います。受診先は、子どもの場合ではかかりつけの耳鼻科でもいいですし、小児科に相談いただくのもよいですね。
注意欠陥・多動性障害のような症状が緩和した例も。
—子どものいびきに関することで、印象的なエピソードはありますか?
注意欠陥・多動性障害の疑いがある子どもが、いびきがあるということで耳鼻科を紹介され、私が診察を担当しました。検査をしたら重度の睡眠時無呼吸症候群があることがわかり、扁桃腺とアデノイド、鼻の粘膜を焼く手術をしました。
印象的だったのは、手術後に、落ち着きのなさ、多動や攻撃的な行動が改善されたことでした。発達障害の診断はなかなか難しく、その子どもも「疑い」だったのですが、睡眠時無呼吸症候群は、注意欠陥・多動性障害のような症状を示すことがあることを、改めて思い知らされました。
もう1つ。鼻の手術をしたある成人の患者さんも印象的でした。手術前は、鼻づまりがあってすごくイライラすると訴えていたのですが、手術後はイライラすることが無くなったそうです。さらに、ずっと吸い続けていたタバコをやめられたという話を聞きました。鼻づまりによって睡眠が分断され、睡眠の質が低下することが、精神面にも大きく影響していると改めて感じましたね。
慢性的な鼻づまりの方は、夜間のいびきや鼻づまりには気づかない方も多いと思います。寝ている間は鼻がつまっているのに、受診したときには鼻が通っていて、治療や対策ができてない場合もあります。そんなとき、私が必ず患者さんに伺うのは、朝起きたときに喉が渇いているかどうか、朝に喉が痛くなるかどうか。鼻には加湿という重要な機能があり、鼻づまりの場合は喉が乾燥することで、喉が渇いたり痛くなったりといった症状が出やすく、夜間の鼻づまりの目安になります。
子どもの睡眠のリズムと環境を整えるために、保護者ができること。
—子どもの睡眠の質を低下させないために、日常生活でできる対策は?
睡眠の質が低下すると精神面や行動面だけでなく、学習面にも影響するとされています。睡眠の質がよい子どもと悪い子どもを比較したところ、学力の違いがあるという研究結果もありますし、子どもにとって睡眠はとても重要なんですよね。
睡眠の質を低下させないために大切なことは、まずは睡眠のサイクルを乱さないこと。睡眠のサイクルには、光が大きく関係しています。だから、夜はスマホやタブレット、パソコンなどは見せないようにして、朝には太陽の光を浴びて起きる。
実は、うちの子もタブレットをよく見るのですが、どんどん夜の就寝が遅くなったせいで、朝起きられなくてグズって大変でした。それで、朝6時に起きて夜は9時に寝るという早起き早寝習慣を心がけるように気をつけたんです。小さな子どもは、やはり親がある程度コントロールしてあげることが大切だと思います。
一方で、睡眠時無呼吸症候群や鼻づまりで睡眠の質が低下すると、睡眠時間は足りていても、朝起きられない。朝グズるということもあります。子どものそのようなサインを見つけて対策をとってあげられるのも、親御さんだからこそですよね。
鼻がつまっていて鼻呼吸ができないと、いびき、集中力・注意力の低下、口呼吸による喉の乾燥、睡眠障害など、生活の質に悪い影響を与えます。ぜひ、鼻づまりを後回しにせず、対策をしてあげてほしいと思います。
取材・文/武田明子

柏の葉耳鼻咽喉科クリニック院長
永藤裕(ながふじひろし)
2003年杏林大学医学部耳鼻咽喉科学教室入局。国際医療福祉大学三田病院 頭頸部腫瘍センター、公立福生病院医長、鼻のクリニック東京、杏林大学医学部付属病院助教を経て、2018年柏の葉耳鼻咽喉科クリニックを開設。自身も鼻の手術をしたことで鼻の重要さを実感したことから、耳鼻咽喉科の道へ。鼻呼吸障害の豊富な臨床経験ももち、鼻づまりの診察・治療に力を注ぐ。
柏の葉耳鼻咽喉科クリニック:http://kashiwanoha-jibika.com
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