安眠の秘訣は枕にアリ!? 自分に合った枕で寝起きスッキリ!

睡眠時間が短いわけではないのに、なぜか起きた時にスッキリしない。肩や首のコリがある。腰に痛みがある……。そんな症状がある方は、もしかすると枕が身体に合っていないのかもしれません。自分の身体にぴったりと合った枕で寝ると、ぐっすりと安眠することができ、寝起きもスッキリするといいます。
ここでは、長年、人の身体と枕の関係を研究し続け、枕外来という特殊外来がある神奈川県の『16号整形外科』院長・山田朱織 先生に、なぜ安眠にとって枕が大切なのか、その理由や自分に合った「手作り枕」の作り方などをお伺いしました。
なぜ安眠には枕が大切なの?
山田院長:枕外来のある『16号整形外科』は、私の父が1972年に東京・町田に開業した『成瀬整形外科』の精神を受け継ぐ形で、枕と睡眠分野を専門とする整形外科として2007年に開業しました。父の代から首や腰の痛みを相談しにくる患者さまが多かったのですが、父は多くの患者さまと向き合うなかで、睡眠時に使用している枕の重要性を考え続けていました。
そして、患者さまの身体に合わせた手作り枕を提供し続けてきたのです。私はそんな父の診察風景を見て育ったものですから、身体に合った枕で眠ることで患者さまの症状がみるみる改善されていく様子に驚くばかりでした。人間が健康に生きていく上で枕がどれだけ重要なアイテムか、ということを幼い頃から学んできたのです。
なぜ枕が人の身体にとって重要なのかというと、人間は起きて直立歩行している間、約4〜6キロの頭を首で支えています。その重みを休められるのは横になって寝ている状態の時。自分の身体に合った枕で眠ることで、ようやく一日中頭の重みで疲れた首を休めることができるのです。逆を言えば、枕が合っていないとせっかく横になっても身体をきちんと休めることができないというわけです。
身体に合っていない枕で寝るとどうなるの?
枕の高さが高すぎたり、低すぎたりと、自分の身体に合っていない枕で寝ると首の神経に支障をきたす可能性があります。首の骨と骨の間を通っている神経が出口で圧迫されてしまい、朝起きた時に肩こりや手のしびれが出てしまうのです。
また、研究の結果、首のS字カーブを維持するクッション性のある枕よりも、寝たときに首の頚椎がまっすぐな状態になる枕の方が身体に負担をかけないということも分かっています。
枕に突っ伏して寝るうつ伏せ寝もおすすめできません。うつ伏せ寝は背骨や肩、骨盤にも負担となります。これは、寝返りをせずに同じ姿勢を長時間続けてしまうことに原因があります。飛行機のエコノミークラス症候群と同じ状態です。朝目覚めたときに、顔がむくんでいたり、寝違えていたりといった症状もうつ伏せ寝が原因であることがあります。
まずは今お使いの枕が自分の身体にあっているかどうかを知る必要があります。以下のような症状が出ている場合は枕や睡眠姿勢に問題がある可能性があるのでチェックしてみてください。
睡眠中の症状や様子
・トイレに何度も起きる
・寝返りせずにじっと寝ている
・寝返りをすると身体が痛くて目が覚める
・熟睡できない
・うつ伏せで寝ている
・いびきがうるさい
起きた時の身体の症状
・肩や首のコリや痛みがある
・頭痛や腰痛がある
・手足が痺れている
・めまいがする
・熟睡感がなくだるさを感じる
・枕が首から離れている
安眠できる枕とは? 正しい枕の条件3つ!
長年の研究結果により、安眠できる「正しい枕の条件」というものが分かってきましたのでご紹介します。
①枕の高さがジャストサイズであること
一番大切なことはジャストサイズであること。横になって首を休める時に重要なのが枕の高さなのですが、もちろん体格によってどんな枕がフィットするかはそれぞれ違います。
一人一人に最適な枕の高さというものがあります。ここで大切なのは、必ずしもフィットする枕が自分好みのものであるとは限らないということです。自分の感覚だけで合うかどうかを判断せず、身体の高さに合った枕とはどういうものか?を研究したり、専門家に見てもらったりするなどしてください。
②フラットな形状を保てる素材であること
正しい枕のもう一つ条件として、フラットな形状を保てる素材であることも大切です。低反発枕やそばがら枕、羽毛枕などさまざまな種類の枕がありますが、寝返りがしやすいように、頭が沈み込んでしまわない形状の枕を選ぶことをおすすめします。
また、寝返りがしやすいということはとても大切です。身体にあっていない枕で寝返りをすると、寝返りのたびに首や身体全体に負担がかかり、知らず知らずのうちに安眠を妨げ、疲れがたまってしまうのです。
③メンテナンスをし続けること
そして、ジャストサイズの枕に出会えたとしても、定期的な日干しやクリーニングなどのメンテナンスを続けることも忘れないでください。
山田朱織 院長直伝! 安眠「手作り枕」の作り方
安眠できる「手作り枕」は、父の代から患者さまにすすめてきたものなのですが、簡単に手に入るアイテムで作ることができるので、ぜひ試してみてください。
【用意するもの】
・縦60センチ、横90センチ程度の玄関マット
・タオルケット
・バスタオル
【作り方】
①玄関マットを3つに蛇腹折りにする。*
②タオルケットを4つ折りにして玄関マットに重ねる。
③ご自宅のベッドの上で横になり、高さをチェックする。
*蛇腹(じゃばら)折りとは:山折り・谷折りの順に端から均等な幅で折る折り方。できあがった形が蛇の胴体のように見えることからこう呼ばれている。
高さは、横向きになったときに額から鼻、顎、胸の真ん中までの一直線が枕とベッドと平行になっているのがベストです。高ければタオルケットをめくって調整、低ければさらにバスタオルを重ねて調整してください。
また、仰向けに寝てみて呼吸がしやすいかどうか、寝返りがしやすいかどうかも確認を。仰向けに寝たときに呼吸がしやすいかどうかというのは、実感するのが難しいかもしれませんが、目安として寝ている布団の面に対して首が約15度前後の傾斜がある状態が適合した高さになります。気道が確保され、頚椎の神経の出口が広がります。
寝返りがしやすいかどうかのチェックも重要です。睡眠中は寝返りが無意識に20〜30回程度行われると言われています。血液やリンパ液の循環、体温調節、体圧分散など身体の状態を健康に保つ以外にも、背骨を整える役割もあります。起きている状態で寝返りがしやすいということは、睡眠中も力を入れずに寝返りをすることができるということ。目を覚まさずに寝返りができることで安眠につながるのです。
いかがでしたか? 今使っている枕は身体に合っているでしょうか? きちんと計測して自分だけの究極のオーダーメイド枕を作るという手段もありますが、まずは身近なもので簡単に試せる手作り枕で寝てみてその効果を実感してみてください。ふかふかの枕でしか眠ったことがない!という方には最初は固くてフラットな枕は抵抗があるかもしれませんが、慣れてくるとその心地よさにハマってしまうかもしれませんよ。
取材・文/横田可奈
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16号整形外科院長
山田朱織 (やまだしゅおり)
16号整形外科院長/医学博士。株式会社山田朱織枕研究所 代表取締役社長/マクラ・エバンジェリスト。日本整形外科学会専門医、日本運動器疼痛学会暫定代議員。
日本腰痛学会会員、日本脊椎脊髄病学会会員、日本睡眠学会会員。
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