漢方で睡眠不足を解消！ぐっすり眠れるようになろう
COLUMN
東洋医学では睡眠不足は未病といって病気ではないけれど、健康でもない状態とされています。睡眠不足を解消すると、ストレスを感じづらくなる、代謝が上がり太りづらくなる、脳がしっかりと覚醒して仕事効率が上がるなど様々な効果が期待できます。
西洋医学では、睡眠薬によって睡眠不足の改善を目指しますが、東洋医学では心や身体の状態をもとに漢方によって全身を改善することで、睡眠不足の改善を目指すそうです。
今回は東洋医学の観点から、睡眠不足を解消する漢方をご紹介します。
東洋医学の「陰陽論」に睡眠不足を紐解く鍵が？
東洋医学には陰と陽という考え方があるそうです。
『陽』とは、活動的、暖かい、興奮などの性質を指します。これに対して『陰』とは安静、冷たい、抑制などの性質を指します。このバランスが崩れてしまうことが睡眠不足の原因と考えられています。
ふつう日中の活動しているときには『陽』が強く現れ、夜に睡眠や休息をとるときには『陰』が強く現れます。しかし、このバランスが逆転してしまうと、夜に寝ようと思っても『陽』が強く現れ『陰』が弱くなるので、睡眠不足になってしまうそうです。
さらに、睡眠を管理するのは東洋医学では五臓（心臓・腎臓・肝臓・脾臓・肺臓）の中の『心』が中心と考え、この心の陰陽バランスを診ることでなぜ睡眠不足になっているかどうかを判断します。例えば、子どものころ『明日は遠足でワクワクして眠れない！』という経験をされたかたも多いのでは？これは喜びの感情により、心の陽が過剰になってしまう結果です。
このほか、日々のストレスや生活習慣、夜にスマートフォンやテレビを遅くまで見てしまうことも、心の陽を過剰にする原因になります。また、心の陰が不足することも睡眠不足の原因と考えられます。
陰は脾胃で食事から作られるものと、腎に蓄えられたものが中心で、これが心に供給することで心の陰を補っているそうです。食習慣の乱れなどから脾胃の陰や腎の陰が不足すると、心の陰が不足してしまい陽が強くあらわれることで睡眠不足となってしまうそうです。
このように全てがつながって症状が起きているというのが東洋医学の考え方です。そしてこの陰陽のバランスを整えるサポートをしてくれるのが漢方です。
睡眠不足に効く漢方３選
陰陽のバランスを整えることが睡眠不足改善の鍵ですが、バランスの崩れ方や症状は人それぞれです。自分にあった漢方を選ぶことが大切です。睡眠不足に効果的な漢方はいくつかありますが、その中から３つ抜粋してご紹介します。
帰脾湯
貧血気味で胃腸が弱く、夜に何度も起きてしまうかたにおすすめの漢方です。
胃腸が弱り、食欲が落ちると元気までなくなり、不安になったり落ち込んだり、寝ても何度も起きてしまう…そんな睡眠不足に白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗で胃腸の調子を整え、人参と黄耆で元気付け、香木で気分を落ち着かせてくれるだけでなく、酸棗仁、竜眼肉が不安と不眠に働きかけてくれます。
酸棗仁湯
疲れすぎて眠ろうとしても興奮して眠れないかたにおすすめの漢方です。
疲れていると簡単に眠りにつけそうですが、体力が落ちすぎてしまうと興奮が抑えられず逆に眠れなくなったり、寝ても深く眠れず起きてしまったりするそう…そんな睡眠不足に知母で興奮を抑え、酸棗仁で血を補い疲労回復させ、茯苓、川芎が心の安定をもたらしてくれます。
大柴胡湯
ストレスが溜まり、イライラして眠れないかたにおすすめの漢方です。
体格がよく体力は十分にあるけれど、なんだか最近イライラして怒りっぽい、興奮して寝つけない…もしかしたら便秘ではありませんか？
排便は『陰』が強いときに行われるものです。なので、便秘は『陽』が強くなってしまっているサインです。そんな睡眠不足に柴胡、黄芩、大黄がイライラを抑え、柴胡、枳実が気分を晴れやかにするだけでなく、半夏、生姜、大棗が胃腸機能を整え、枳実、大黄が便秘を改善してくれます。
いかがでしょうか？今回は３種類のみをご紹介しましたが、睡眠不足に効く漢方はまだまだあります。上記の症状が思い当たるかたもそうでないかたも、睡眠不足を放っておかずにしっかり改善したいですね。その時は漢方を頼ってみてもよいかもしれません。
ただ、漢方は効きも穏やかで副作用が少ないとはいえ、立派な薬です。睡眠不足だけでなく様々な症状、そのかたの性格や生活習慣、環境まで診て処方されるので、お飲みになる際は最寄りの病院、クリニックに受診して自分に合うものを処方してもらうことがおすすめです。
参考文献：
「症例別 漢方治療論 不眠症」（南山堂）
「図解 東洋医学のしくみと治療法がわかる本」（ナツメ社）
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今井菜穂子（いまいなほこ）
管理栄養士・遺伝子アドバイザー
株式会社谷田ヘルスリンク、渋谷DSクリニックにて栄養指導経験を積む。海外留学を経て現在はさくら内科クリニック（東京都世田谷区）にてダイエット、美容、健康に悩む方へ栄養・食事指導にあたる。ほか、食生活や生活習慣、美容、ダイエットに関する記事の執筆、監修。
公式HP:http://nahokoimai.com
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